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唾液の驚くべきチカラ
子どもの頃、転んで作ったちょっとした傷など「唾をつけたら治る」と言われたことはありませんか?
実はこれ本当なんです。
唾液は「汚い」というイメージがあると思いますが唾液にはさまざまな働きがあり、お口の中を潤してくれるだけでなく全身の健康に関わる大切な役割があるのです。
今回は「唾液のチカラ」についてお話します。
唾液に含まれる成分
健康な成人で通常1日1〜1.5ml(大きなペットボトル1本分)もの唾液を分泌しています。
唾液とは、唾液腺という場所で血液の成分からできている液体のことです。
唾液の99.5%は水分、残りの約0.5%は無機成分がカルシウム、リン酸、ナトリウム
有機成分はムチンや抗菌・免疫物質で作られています。
唾液の働き
(1)消化作用
唾液に含まれるアミラーゼという酵素が、でんぷんを分解し食べ物を胃で消化しやすくしてくれます。
(2)保湿・保護作用
お口の中の歯茎、頬、舌など粘膜で覆われています。この粘膜を守ってくれ保湿・保護してくれるのが唾液です。
口の中がカラカラに乾いてしまうと、話しずらくなったり、食べずらくなったりするだけでなく、口臭、虫歯、歯周病などの原因にもなります。
(3)自浄作用
口の中の食べカス、汚れを洗い流してくれます。よく「食後30分は歯磨きしてはいけない」というのも、食後すぐから20~30分以内は唾液の分泌量が多くなり、口の中をきれいに洗い流してくれるからです。
(4)緩衝作用
お口の中はもともと酸に弱いため中性に保つ必要があるのです。食べ物などで刺激を受け変化したお口の中を唾液が中和し元の環境に戻してくれます。
特に、虫歯菌が歯を溶かそうと作った酸を中和してくれる働きはとても重要です。
(5)再石灰化作用
唾液に含まれるカルシウムやリンなどは、歯の再石灰化を促し虫歯になりずらくします。
(6)抗菌作用
お口から入ってくるウイルスやバイ菌、細菌の増殖を防いでくれます。唾液の中に含まれる10種類以上の免疫物質や酵素で対抗してくれるのです。
(7)修復作用
お口の中の傷って身体の傷に比べると早く治ると思いませんか?
小さな頃に「唾をつけたら治る」が、まさにこれです!
唾液に含まれる粘液成分のムチンが粘膜の修復作用をしてくれます。最近では、ヒスタチンと呼ばれる唾液中のタンパク質が、血管の新生、細胞同士の接着などに影響し、傷の再生を促進することが解明されたとのことです。(※1)
唾液が減ると……
唾液の分泌量が減りお口の中がカラッカラ!に乾燥した状態になったことはありませんか?
一時的に減っただけでなら問題ないのですが、慢性的に唾液の分泌量が減っていると感じる人は「ドライマウス(口腔乾燥症)」という病気を疑いましょう。
「ドライマウス(口腔乾燥症)」になり唾液が減ってしまうとさまざまな症状が現れます。
・虫歯・歯周病になりやすくなる
・口臭の原因になる
・消化能力が落ちる
・味が感じにくい
・飲み込みにくい
・風邪を引きやすい
・口内炎や口角炎になりやすい
・お口の中がヒリヒリする
・夜中、水を飲むために起きる
他にも、入れ歯が痛くなったり、口の中がネバネバしたり、話しずらくなるなどの不快な症状が続きます。
唾液が減る原因とは
・疾患(パーキンソン病、シェーグレン症候群、エイズ、糖尿病など)
・生活習慣や環境(ストレス、口呼吸、不十分な口腔ケア、乾燥した室内など)
・加齢に伴う機能低下(女性の場合更年期障害以降に見られがち)
・薬の副作用(抗うつ病薬、血圧降下剤、他)
(出典:キユーピー)
唾液は、30代をピークにどんどん減少していくそうです。加齢や投薬、ストレスなどの影響もあるのでドライマウスを疑っている人は、簡易自己診断を試してみてはいかがでしょうか。
ドライマウスの簡易自己診断
・水をよく飲む
・夜中に渇きで目が覚める
・乾いた食べ物が噛みにくい
・食べ物が飲み込みにくい
・今までと味が違う
・口の中がネバネバする
・入れ歯で歯ぐきが傷つく
(出典:大阪歯科大学附属病院ドライマウス外来)
もし、慢性的に唾液が減っていると感じ、日常生活に不安を感じている方は一度歯科医院や専門医を訪ねることをおすすめします。
唾液を増やすためには
まずは、十分な水分補給!タンブラーなどに入れると持ち運びできるので、少しずつ小まめに水分補給しましょう。
普段の食事からしっかり噛むことも大切!一口30回を目標によく噛んで食事を楽しみましょう。そして、口と舌をよく動かすこと。歌を歌ったり、おしゃべりを楽しんだり、朗読をしたりなどおすすめです。
他には、唾液腺マッサージと舌トレーニングもおすすめです。
唾液腺マッサージ
お口の中にある耳下腺(じかせん)・顎下腺(がっかせん)・舌下腺(ぜっかせん)というポイントをマッサージしましょう。
(1)耳下腺マッサージ
親指以外の4本を頬にあて、上の奥歯周辺を後ろから前に向かって10回程度ゆっくり回す。
(2)顎下線マッサージ
両手の親指を合わせ、顎下の骨の内側の柔らかい部分に当て、耳の下から顎の下5カ所ほどを5回ずつ押す。
(3)舌下腺マッサージ
両手の親指を合わせ、顎の真下から舌を押し上げるように10回押す。
食事前に行うと唾液の分泌量が増え、お口の中が食事に適した環境になります。リラックス効果も期待できるので試してみてはいかがでしょうか。
唾液は縁の下の力持ち!
いかがでしたか?
縁の下の力もちとも言える「唾液」。
お口の渇きは病気のサインともとれます。
お口の中が潤い、美味しく食事をするため、会話を楽しむためにも
最近、口が乾き気味だなと感じたり、いつも乾いていると自覚症状のある方は
いつでも気軽にご相談ください。
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(※1)日経新聞
参考文献:公益社団法人8020推進財団
梅ヶ丘一丁目歯科 院長 堀籠眞一(ほりごめ まさかず)
経歴
松本歯科大学を卒業
医療法人社団 歯友会「赤羽歯科」
医療法人社団 友伸会「仙川町歯科クリニック」
両院併せて30年以上、歯科診療に携わる。大手の歯科医院勤めにより先進技術・先進医療を取得。
学会にて常に新しい治療方法を学んでいる
モットーは『自分の歯で一生を過ごす為の治療』慣れ親しんだ梅ヶ丘という地で開業し、皆様に愛される地域に根付いた歯科医院を目指しております。