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喫煙がもたらすもの
梅ヶ丘1丁目歯科 堀籠(ホリゴメ)です。
今回は、喫煙(たばこ)と歯の関係についてお話しします。
たばこを吸うとどうなるのか?「たばこのヤニ」や「黄ばみ」が歯に付くだけじゃないの?と思われがちですが、たばこの煙の中には、約4,000種類の化学物質が含まれ、そのうちの約200種類が有害物質、発がん性物質が約70種類と言われています。(※1)
そのような煙を思いきり吸い込むとどうなってしまうのか?
詳しくご説明していきます。
たばこに含まれる三大有害物質
まずは、たばこの煙に含まれている代表的な有害物質をご説明します。
(1)ニコチン
化学物質としては毒物として指定されている。たばこの葉に含まれ、強い依存性がある。
血液中のニコチンは急速に全身に広がります。中枢神経にあるニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR)にニコチンが結合すると、報酬系と呼ばれる神経回路に作用して心地よさをもたらします。喫煙の習慣をなかなか止めることができないのは、この仕組みが強い薬物依存を引き起こすためです。
(2)タール
一酸化炭素やガス状成分をのぞいた粒子状の成分の総体を、タール(たばこのヤニ)と称しています。タールに含まれる発がん性物質の代表的なものにはベンゾ[a]ピレン・芳香族アミン類・たばこ特異的ニトロソアミン類などがあり、他にもがんを引き起こす可能性のある物質が約70種類含まれています。
(3)一酸化炭素
一酸化炭素はたばこの煙に1%から3%ほど含まれています。ニコチン・タールとともにたばこから発生する有害物質の代表的なものとして「たばこの三害」などと呼ばれます。
一酸化炭素とヘモグロビンが結びついた一酸化炭素ヘモグロビンの体内での半減期は3-4時間程度なので、頻繁に喫煙する人は慢性的な酸素欠乏状態となり、ひいては赤血球が増えるなどの影響もあります。(※2)
喫煙すると口の中がどうなるの?

画像:shutterstock
たばこを吸うとヤニで歯が黄ばんでしまうだけでなくさまざまな悪影響を及ぼします。
(1)虫歯になりやすくなる
たばこに含まれている「ニコチン」は、唾液の分泌を抑制する作用があります。たばこを吸えば吸うほど、唾液の分泌量が減り、口が乾きやすくなったり、お口の中がネバネバする、喉が渇きやすく感じるのではないでしょうか。
唾液が減ってしまうと自浄作用の機能が鈍くなり、歯垢や歯石も付きやすく虫歯菌の増殖を誘発してしまいます。
(2)歯周病の発見が遅れる
喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病にかかる確率が高く、悪化しやすいと言われています。
さらに、たばこに含まれる成分の一つである「ニコチン」は、血管を収縮させる作用があり血液の流れを悪くし、歯茎に栄養や酸素を十分に届けることができなくなります。抵抗力も弱まり白血球の働きが鈍く、痛みなどにも鈍感になってしまうのです。
こうなると、歯周病になっても発見が遅くなる可能性が高く気がついた時には重篤な症状になっており、治療しても治りにくく長期化してしう傾向にあります。
(3)口臭の原因になる
たばこを吸うと歯が黄ばむ原因にもなるのが粒子成分である「タール」です。
タールには油分が含まれており歯に付着するだけでなく、舌や歯茎などにも付着し独特の臭いを発生させます。ニコチンでお口の中が乾燥するのも口臭の原因の一つです。
喫煙と歯ぐき
たばこを吸うとタールが歯を黄ばませる原因と話しましたが、歯茎にもタールは付着します。タールはただ付着するだけでなく、口腔粘膜のメラニン色素を呼び歯茎を黄色〜黒へとどんどん変色させていきます。さらに、ニコチンで歯茎の毛細血管が収縮し粘膜が暗紫色に変色します。
こうなってしまうと歯茎や口腔粘膜が酸欠になったり栄養不足状態へと陥り、さまざまなお口トラブルを招いてしまうのです。
口腔がんのリスクもアップ
たばこにはたくさんの有害物質、発がん性物質が含まれています。たばこを吸うと肺がんのリスクが上がると聞いたことがありませんか?それと同じく口腔がんのリスクも高まります。
舌がんを含む口腔がんが発生する主な要因は「喫煙と飲酒」です。口腔がん全体の80%はたばこが原因と考えられています。
飲酒だけでも口腔がんを発生する危険性が高まりますが、喫煙と飲酒の両方の習慣がある人では、より危険性が高まることがわかっています。(※2)
たばこを吸うと、お口の中の環境は確実に悪化します。粘膜細胞の抵抗力が弱まり傷つきやすい状態になってしまい、刺激を与え続けることで咽頭がん・舌がんのリスクがアップしてしまうので注意が必要です。
子どもも巻き込む受動喫煙!
ご自分が吸い込む煙を「主流煙(しゅりゅうえん)」たばこの先から出る煙を「副流煙(ふくりゅうえん)」といいます。
主流煙は、たばこのフィルターを通って吸っている人の体内へ流れていくのに対し、副流煙は周囲のたばこを吸わない人たちの気管内へ有害物質が高い濃度のまま摂り込まれます。これを受動喫煙といい、このことから副流煙の方が有害であると考えられています。
しかも、副流煙は虫歯の発生リスクも高めてしまいます。実際に、2015年に発表された論文によると……
保護者が喫煙者で子どもが受動喫煙した場合の虫歯リスクは2.14倍
保護者が喫煙者で子どもが受動喫煙してない場合の虫歯のリスク1.46倍との結果報告があります。(3歳児時点のリスク)(※4)
喫煙者は外であれば喫煙所の中、自宅はキッチンの換気扇の下や、ベランダ、空気清浄機の近くなど、吸う場所やタイミングを考え周囲への配慮を欠かさないようにしましょう。
たばこを辞めると良いことがたくさん!

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・歯や歯茎への色素沈着が抑えられる
・血流が良くなる
・唾液の量が増える
・治療効果が上がる
・虫歯や歯周病の早期発見ができる
・食べ物が美味しくなる
他に胃腸の調子がよくなったり、肌荒れが改善されたり、息切れ、せきやタンがなくなったりと、たばこを辞めることで得られるメリットはたくさんあります。
たばこが直接、虫歯や歯周病の原因になるとはいえないのですが、因果関係はとても深く喫煙を続けることにより歯を健康に保つことは非常に難しいと言わざるを得ません。
ご自身の健康と周囲の大切な人たちのためにも禁煙をおすすめします。
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※1:テーマパーク8020
※2:厚生労働省e-ヘルスネット
※3:国立がん研究センターがん情報サービス
※4:日本の子供たちの間接喫煙と乳歯の虫歯の発生率
参考文献:日本禁煙学会 禁煙学,第2版,南山堂,東京,2010, 2.
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梅ヶ丘一丁目歯科 院長 堀籠眞一(ほりごめ まさかず)
経歴
松本歯科大学を卒業
医療法人社団 歯友会「赤羽歯科」
医療法人社団 友伸会「仙川町歯科クリニック」
両院併せて30年以上、歯科診療に携わる。大手の歯科医院勤めにより先進技術・先進医療を取得。
学会にて常に新しい治療方法を学んでいる
モットーは『自分の歯で一生を過ごす為の治療』慣れ親しんだ梅ヶ丘という地で開業し、皆様に愛される地域に根付いた歯科医院を目指しております。